- 2009-05-06 (水) 5:28
- まんが
買いましたドスサントス。
改めて読んでみたら少しだけ見方が変わりました。もちろん、ダメ漫画だったという評価は変わりませんが…。
連載中に感じた不快感
通して読んでみて、改めて感じました。頼歩のやる事が全肯定されているからです。
よくよく読んでみると、頼歩ってぜんぜん珍しいキャラクターじゃないんですよね。結構よくある、天真爛漫系の天然サッカーバカです。そんな系統のキャラクターである頼歩に対する読者の評価は、「天然でイイ奴でサッカーが超上手い。だけど自己中で周囲を振り回す迷惑なヤツ」というあたりではないでしょうか。が、自己中で周囲を振り回すという欠点が欠点として描写されません。何をやっても結果的に全部うまくいくのは漫画の主人公だから別にいいんですけども。
たぶん作者が考える正しい行動がそうであるから、あるいはやりたい、やりたかった事がそうだから、なのではない? でしょうか? 根拠なしに想像しすぎか。でも、作者が菜食主義者で頼歩も菜食主義者だ、とわざわざ書いているくらいですし、他にも共通点はあるようですから、自己投影あるいは願望投影をされたキャラだと読者に解釈されても文句は言えないでしょうね。
そういった不快な頼歩が最も現れている場面が最終回の「それって楽しい?」でしょう。
しかもその発言は決して天然ではなく、相手を否定する発言が、相手に対してではなくギャラリー(読者)に対してキツ過ぎない、一応認めているんだよというポーズのための「それはそれでありかもしれないけど」という前置き戦術を使っています。この場面では、守って守って守って———カウンターチャンスを待つ。1つの戦術としてありって言えばありだけど…
とし、観客…読者向けにオブラートに包んだ上で、でもさ、それって楽しい?
と続けています。計算してます。天然じゃないです。天然なら、結局は言葉でも行動(その後、全員上がって点取って勝つ)でも相手を全否定しちゃう前置きに予防線を張ったりしないんじゃないでしょうか。「そんなのはサッカーじゃない! 本当のサッカーを見せてやる! うりゃりゃりゃりゃーーー! これが! 本当のサッカーだああああ!!!」とかやっちゃってくれた方が、まだよかったと思います。この場面で、私の中で頼歩のキャラクターが破綻しました。
いや、それまでにも計算ぽい描写は結構ありましたけど、一応この漫画の中ではこれが天真爛漫キャラなんだろう…ということで、そのように読んできたのですが、なんかなあ。
上記の発言による作品の評価については、連載終了当時の左上のぷち掲示板のログを引用します。
- サッカーがつきぬけたぁ!伏線を全く回収せずに終わったー!
by 咲葉 [02/16 10:54]- 最終回の、他人のサッカーを否定し引き合いにすることで自分のサッカーを語る頼歩には、打ち切り漫画的に「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!」と言いたい。ふざけるなァ!
by kyouso [02/17 15:19]- 楽しんで勝つというテーマを相手のスタイルの否定でしか見せられないなら、また打ち切り順当かと
by Nkgw [02/18 13:07]
那珂川さんの評価が的確に的を射ているでしょう。
ああでも、同じ「それって楽しい?」系の発言でも、第1話で松戸に縛られながらサッカーしたって楽しくないよ
は別に悪くないですよね。松戸を否定せずに松戸のスタイルを変える事を提案できていて、イイ。否定しているのは形のない「常識」とやらだからでしょうね。フィクション的には、常識を破るのはいい事です。だから黒嶺戦でも、試合を通じて相手に変化の切っ掛けを与える方向でいければ王道展開だったのかもしれません。SRAM DUNKで言えば、豊玉戦みたいな感じで。わずか10話の打ち切りじゃそんな時間ねえよ! ということなのかもしれませんが、評価は世に出た作品でされるのが当然なので、無理を言ってるとは思いません。そこまで配慮する義理はねぇー
じゃあどうすればよかったんだよと言われると困りますが、どうすればよかったんでしょうね。頼歩は読者が「なりたいキャラ」ではなく、読者が「一緒にサッカーやりたいキャラ」として作られていると思うのですが、アレに振り回されるのは御免蒙りたい…ので、うーん…。冒頭の、商店街でドリブルが決定的にマズかったのかなあと思います。警察から注意来たって部員に言われても、100%悪いと思ってなくって、ギャグ調で逃げるんだもん。やだよあんなの。あれだけでイラッと来て、その後は坊主憎けりゃ袈裟まで憎し。
頼歩のギャグも私は不快ですが、おそらく作者が乗り移ってのギャグだと思うので割愛しました。
単行本に感じた不快感
楽しいのは作者だけ、と感じました。少なくとも、それを読者に伝えられているとは言えないでしょう。悪く言えば、同人っぽい内輪っぽい楽屋っぽい。読者たる俺様が除け者とは何たる事か!
わずか10話で終わっただけあって、作品そのもの以外のオマケが満載でした。そりゃそうですよね、わずか10話で2巻ですし、値段だってワンピやナルトと同じなんですから、少しはサービスしてもらわなければ割に合いません。その意味では、ボリューム的にはサービス満点でした。オマケの内容は以下の通りです。
- マイスター 1巻
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- カバー裏:1コマ漫画
- 各話ごとの余りページ:ウイ○レ(ウイニングイレブンのことと思われる)のEDITモードでマイスターのキャラを勝手に作ってみようのコーナー&キャラの簡単なプロフィールと命名由来(頼歩、松戸、喜壱、平)
- 読み切り:ストライカー義経&作品解説
- 巻末:サッカー&マイスター用語解説
「おはようドスサントス」の解説まで載ってるぞ! 知りたきゃ買え!
- マイスター 2巻
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- カバー裏:1コマ漫画
- 各話ごとの余りページ:1巻と同じ(甲斐、錦、大判小判、その他のキャラひとまとめ)
- 読み切り:Children of Symphony&作品解説
- 読み切り:スカルジャッカー&作品解説
- 書き下ろし:マイスター0話(カwwwジwwwパwwwンwww)
- 巻末:あとがき
0話は蛇足感バリバリバリーーーだけど、カジパンが何か知りたければ買え! 聞かれても教えないおwww
こんなに盛りだくさんで、いやはや、量だけなら買って少しは得をした気分になりました。で、本題の「不快」→「楽しいのは作者だけ」ですが、要するに、オマケの中に占める「読者が知りたかった事」の割合が異様に低いんです。
これまた10週打ち切りの「重機人間ユンボル」(武井宏之)を例にとってみます。この漫画は、一応まとめて終わりはしましたが、様々な設定やら何やらのほとんどを放ったらかしで終了してしまいました。これは大好きな作品だったので単行本を買ってみたら、内容は下記の通りでした。
- 各話ごとの余りページ:ユンボル補足コラム その1〜その9(ユンボルの語源/クローンと記憶とユンボルホーン/ユンボルホーンとその働き/ユンボルの装備品/工法(クンポー)とテツグンテ/THE EARTH MOVERS(1)/THE EARTH MOVERS(2)/バルトロニカ/ユンボル〜男の世界)
- 巻末:ドカルト出版の学習百科図鑑 重機人間ユンボルJAPAN(ワールドザンド世界地図 設定版?と作中で一般に出回ってる版/各国の解説と世界情勢/キャラクター図鑑/世界の重機(メカニック設定) 計13ページ)
- あとがき
もうさ、見出しだけでワクワクしてこない? 世界設定、キャラクター設定、メカ設定、作中の技術についての解説など、知りたかった事だらけなんですよ。この作品が続いていたら、こうなってただろう、ああなってただろうという想像を手助けするツールで満ちあふれている単行本なんです。打ち切り漫画の単行本を買う読者は、その漫画が続く事を願った読者が大半なのではないでしょうか。だったら、もし続いてたらどうなったのか知りたいはず、ではないでしょうか。
こういうのが盛り沢山なのは未練タラタラなのが具現化したものという見方もあるかもしれませんが、私が面白かったんだからいいんです。武井宏之のファンでなくても買いですね。日本語が読めるなら買うべき。
これと比較してマイスター。ウイイレのEDITなんて載せて、それ使って遊ぶファンがいるとでも思っているんだろうか? 1ページ1人なんですが、タイトルが1/5、選手の基本スペックと顔写真で1/3くらい、能力値(27項目)で1/5、残りの約1/4が簡単なプロフィールと命名由来です。ウイイレのナントカなんて載せるくらいなら、そのぶん各キャラクターについて、もっと書いて欲しかったです。こいつはこういうヤツだったけど、頼歩と出会ってこうなり、後にああなってこうなってとか、出番のなかった家族の人々とか、そういうのが読みたいのよ。この連載が続いたときにどうなってたか、何が描きたくて何が描けなかったかとか、そういうのが知りたいのに。他チームのキャラとかさ、設定がないわけじゃないでしょう。もったいないから温存してる可能性もあるかもしれませんが、そんなん読者が配慮すべき問題じゃないから知らん。せめて黒嶺のキャラだけでも設定を載せて欲しかったです。打ち切り漫画を買ってくれる奇特なファンにはもっとサービスするべき!
1巻のサッカー&マイスター用語解説も1人よがり全開です。サッカー用語を説明している4ページ目までは、サッカーについてよく知らない私でも「これなら漫画についていける」というくらいには役に立つ説明でよろしいのですが、5ページ目から内輪受け…ではないな、自分受け? が始まります。用語に混じって、あれはギレンのセリフだとか巨神兵だとかデカルチャーだとか、素人がごく狭い対象への受けを狙って書くブログの文章じゃあるまいし、自分の作品を超広く発表するチャンスを掴んだ立場の人が何やってるのかと思います。自分の作品で勝負しろよ! 元ネタ分かる人はしらけるし、知らない人は分からないしで、意味ないんじゃないの? サッカー用語の説明は分かりやすくてちょっと個性的でマーベラスなだけに、もったいなく思います。
こうなると、2巻のあとがきも気に入らなくなってきます。お前の不幸話など誰も読みたくないわ! どこかにこの作品がどうなる予定だったのか、あるいはどこかにヒントや想像を手助けするツールが載ってるんじゃないかと思って全部を読みましたが、どこにもなかった。すごく残念です。読者は漫画家より漫画に興味があるんじゃないの? 頼歩がっていうより、作者自身が天然なんだろうか…。描きたいものを描くのはいいけれど、読者が読みたいものにもう少し歩み寄って欲しいなあと思いました。そんなだから描きたいものを描けずに終わっちゃうんじゃないのか。
以上により、加地君也という漫画家に興味があるなら、買って損のない単行本だと思います。私は読んでいるうちに興味が出てきたので、結果的に損はしませんでした。昔の加地君也はこんなんだったんだーと10年後くらいに楽しめたらいいなあと思います。純粋に漫画としての価値は、ゼロに近いです。こうなると闇神コウ〜暗闇にドッキリ!〜も欲しくなってきますね。
余談ですが、読み切りのスカルジャッカーは、設定は面白いです。設定を聞いて、じゃあ描いてみたらって描かせてみたらダメになった感じ。設定以外の全てが不快。詳しくは買って読め。
こんだけ書くのに深夜に4時間もかけちまったバロスwww いつか名作を描いてもらわないと割に合わないよ。
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コメント:2
- 咲葉 09-05-06 (水) 14:27
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