- 2007-12-19 (水) 12:44
- 軍事
弾道ミサイル防衛についてよく聞く意見として、「100%成功しないなら被害が出る可能性があるから無意味」というのがあります。その意見こそ無意味です。少しは撃つ側のことも考えてみてください。
ここでは費用は別問題ね。意味があんのかないのか、ってことだけ。ないなら費用が高かろうが安かろうが無意味だし、あるなら損益分岐点が存在するはず。だけどそれを探ることと、意味のあるないを判定することは別問題だから。
核ミサイルを撃つってことは、100%の成功(ここでの成功とは敵全滅であって、全弾命中ではない)を期さねばならないんです。なぜなら、核攻撃に敵が気づく前に敵の核戦力を全滅できなければ撃ち返されてしまい、よくて最低の引き分けです。現代ではそれが無理ってことで(戦略原潜など)、相互確証破壊が成立しています。
さらに、敵の殺害や浄化が最終目的でない国家にとって、核攻撃なんてする意味はありません。上記の相互確証破壊で平和が成立するのは世界の全てを焼き尽くせる(た?)米露だけであって、その他の国はそれに加え、敵を倒した後に待っている国際社会からの孤立や経済制裁、多国籍軍の攻撃などといった厳しい処置も抑止力となっています。まともな国家は実際に核戦力を使うことができない世の中なのです。できるのは、核戦力を背景にした恫喝のみです。
で、日本は核戦力がありません。仮にアメリカが報復してくれるとしても確実にやってくれるとは言えませんし、被害は免れないので日本的には引き分け以上がありません。よって、そこを背景とした恫喝は受けざるを得ません。しかし、核攻撃の成功率が90%ならどうでしょうか。90%ならバクチを打つ独裁者がいるかもしれません。50%ならどうでしょうか。10%なら?
核による恫喝のパワーは、「弾道ミサイルはガード不能技」「食らったら死ねる」という事実が支えています。つまり、脅す側としては相手に「やれるもんならやってみろ」と言われたら困るんです。実際には撃てないし、撃ったらたぶん損の方が大きいし、もし迎撃されちゃったら一方的に大損です。たとえ迎撃率10%でも、「万一失敗したら?」「本当に10%か?」と相手に思わせることができます。以前に日本って戦車要るんですかね? に答えるで侵略決断のハードルを上げる
と書きましたが、それと同じことです。
弾道ミサイル防衛は、まさに「やれるもんならやってみろ」の実装です。これを日本が装備して困るのは誰でしょうか? 少なくとも日本ではありません。
というわけで、迎撃の成功率100%でないと意味がない、なんてことはありません。撃つ撃たないだけが全てという誤解です。撃たせないことが最も重要なのであって、撃たれた時に撃ち返せる、無効化できるというのは次善の策に過ぎません。
もちろんですが、手段としてのMDに固執することはありません。他にいい手があればそっちでもいいですし、金がかかりすぎるというのなら安くする方法を考えるとか、建設的な方向でいきましょうよ。
専守防衛にこれほど合致したものもないというのに(SM-3は人も殺せます、なんて与太は受け付けない)、9条を信奉する側の人ほどミサイル防衛を否定するのは何故か(反対ってより否定だよね)。米軍の軍艦が来ると抗議するけど中国の軍艦が来ても抗議しない反戦団体、という事例と似ていると思います。答えはおそらく単純です。単なる軍事アレルギーか、本当の目的は護憲ではないかのどちらかでしょう。
- Newer: 国が払うは俺が払う
- Older: MD試験成功で東京新聞必死すぎ
コメント:2
- ろばQ 07-12-19 (水) 19:28