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軍事力の行使は下策

  • 2008-02-18 (月) 16:19
  • 軍事

では何が上策か? もちろん使わないことです。見せるだけ。

先日のTK-X公開について、結構もっともらしく見え、かつ私と逆の考えを持つ意見を見かけました。これ書いてる人の方が頭よさそうだから総体的な反論はできなさそうなので、重箱の隅をつついてみます。

勝手にまとめると、「いくら優れていても、使わない戦車を作るのは無駄ではないか? 同じ費用で他の物を買った方がいいのでは?」という意見だと認識しました。

私はそうは思いません。この方も軍事力を行使する段階の事しか考えておらず、プレゼンス(俺らに本気出させたら世界二の軍隊でお前ら第二のパールハーバーにしてやんよ、という示威効果)その他を無視しているように見受けられます。

※私はTK-Xが神戦車、という主張をするわけではありません。次期主力戦車導入の是非について、是であるという意見です。

小規模な歩兵部隊の侵攻について

そうなると、有事によりあり得るのは、小規模な歩兵部隊の侵攻などでしょう。ところが現実にはこれこそが、今もイラクで米軍を苦しめているわけです。現段階で最強戦車のアメリカのM1A2ですら、埋設されたIED(即席爆破装置)で撃破されています。対戦車地雷3段重ねくらいにして埋設して同時に炸裂させたり、航空爆弾の不発弾(500ポンドくらい)を改造したりして仕掛けられては、いくら最強の防御力を誇る戦車でも吹っ飛んでいるのです。自慢の120mm滑腔砲で撃破するに足る敵戦車は、まず来ることもなく、こそこそと地雷を仕掛ける歩兵などにやられていては……。

結論から言わせてもらえば、小規模な歩兵部隊の侵攻はあり得ないと思います。意味がないから。また、有り得たとしても、仮に戦車が面白いように撃破されたって最後は撃退できると思います。小規模だから。

まず、歩兵部隊と書いてありますが、これは正規軍かゲリラ軍か、それらは正規戦(フツーの戦争)を仕掛けるのか非正規戦(非対称戦とも。正規軍vsゲリラなど)を仕掛けるのか。文中から推測すると、正規軍にしろゲリラ軍にせよ、それ対自衛隊による非正規戦を想定しているようなので、そう解釈します。

しかし、どちらにしても敵が何をしたいのかよく分かりません。私が某国の指導者なら絶対にそのような指示は出しませんし、そんな無茶な命令をする将軍は処刑します。意味ないもの。正規軍ならそんな自殺行為は命じないのではないでしょうか。

ゲリラ軍も同様です。日本に侵攻するゲリラって、いったい何がしたいのでしょうか。赤化?

アメリカvsゲリラと日本vs侵略者は話が違う

「地雷などでアメリカ軍の戦車が苦しめられている」ということですが、これを日本に当てはめるのには無理があります。なぜか。地雷などを用いた攻撃は、防御です。攻撃ではありません。そして、アメリカvsゲリラのアメリカは攻撃側で、日本vs侵略軍の日本は防衛側です。攻撃側は、個々の戦場では待ち伏せを行うことはあるかもしれませんが、戦略的には待ち伏せができません。寄せ手なのですから。

ちょっと考えてみてください。日本のどこかを侵略なり破壊なりしようとする一団が、上陸するやいなや周囲に地雷を仕掛けて動かない、なんてことがありますか? 何かしにきたのに動かない、というのは矛盾しています。そういう相手に対して馬鹿正直に戦車で突っ込むとか、もっと有り得ません。

つまり、日本を戦場とするなら地雷を仕掛けて待ち伏せをするのは自衛隊です。敵じゃありません。だいたいその爆弾を、こっそり上陸できる程度の小規模な歩兵部隊が幾つ持ってくるというのですか? 10発や20発で戦局に影響するほどに戦車を破壊できるとは思えませんし、そもそも相手は戦車だけではありません。

イラクのゲリラはアメリカの世論の厭戦気分を煽ってアメリカ軍撤退を引き出すため、勝てずともアメリカ軍に出血を強いるやり方をしているように見えます。対するアメリカ軍は村ごとゲリラを吹っ飛ばせば楽なのですが、できません。現地で反感を買いますし、世界の目もあります。自国の世論もそれを許さないでしょう。一方で日本の場合は、自衛権の名のもとに国土防衛の大義名分を振りかざし、被害を最小限に抑えることを最優先に、あらゆる手を使って敵を撃退すべきです。

逆に、その程度の侵攻を受けたくらいで大被害が出るというのであれば、私は軍拡を主張しますね。

ついでに非正規戦について

非正規戦は地の利がなければできません。チェ・ゲバラもそう言ってます(ここは3割冗談です)。日本国内で日本人以外が非正規戦を行うのは、以下の理由から困難、あるいは不可能に近く、発生したとしても鎮圧は国境が地続きな国よりは遥かに容易だと思います。

  1. ほぼ単一民族だから外見でバレる
  2. 敵は補給・補充が難しい
  3. 非政府組織以外は、やった後の方が大変
  4. 豊かすぎて日本人はやる気ない
ほぼ単一民族だから外見でバレる

我々は、白人には見分けられないとよく言われる日本人・中国人・朝鮮人ですら見分けられます。他の民族は言うまでもありません。浸透されづらい、ということです。

敵は補給・補充が難しい

最重要です。いくら訓練された兵でも食糧弾薬なしで戦うことはできません。仮に小部隊の先制上陸を許したとしても、有事となれば海から空から捜索しまくるでしょうから、彼らに補給や補充は届きようがありません。

さらに、現地住民(=日本人)は全て敵です。キューバのゲリラやイラクの反米テロリストのように現地住民が味方で、人員も武器弾薬も食糧も補充できるぜー、という展開は有り得ません。それらがなければ非正規戦はできません。いっぺん、1週間分の食糧と水と4kgの棒(小銃)を担いで歩いてみるといいです(先の、爆弾を幾つ持ってこられるの? ということ)。食糧と水は現地調達できたとしても(そんなん前提の作戦とか、アホかと)、弾薬が無理だから無理。

非政府組織以外は、やった後の方が大変

小部隊だけの破壊工作が成功したとして、その後はどうするんでしょう。まさか全員が証拠ゼロで生還を前提に作戦を立てる訳じゃあるまいし。日本側に報復の大義名分を与えるだけになりませんか? そんなリスクを冒してまで、敵はいったい何がしたいの、ということです。

また、敵にとっては生還の望みがない任務になりますが、自爆テロ以外でそんな任務を誰がやるというの?(逆に言うと、自爆テロの発生はまず防げないと思う)

豊かすぎて日本人はやる気ない

理由は簡単ですね。パンとサーカスは充分なので、軍隊が出張るような規模の日本ゲリラはまず発生しないと思います。学生運動はもうありません。

本来なら「海岸線で足止めできる」も入れたかったのですが、地雷とクラスター爆弾がどうなるか分からないので、あげませんでした。これこそ地の利ってやつなのですが、自ら禁じ手にしているので仕方ありません。特に日本海側の皆様は、有事の際に被害に遭う確率が確実に上昇していることを認識すべきです。抗議の声をあげてもいいくらい。

なお、某国特殊部隊が潜入して破壊工作を行う場合についてですが、ここでは予防を論じているわけではないので割愛します。予防については戦車が装輪装甲車でも同じことですし、対処という点では、破壊工作を実行した時点で敵は“存在自体不明な脅威”から“敵地に孤立した小部隊”に変わってしまうので、おしまいです。

大規模の場合は意図する、しないは別として、~以下の通り、意見に違いがないようなので割愛します。

合法的輸送妨害への対処

それでは、有事の際に、かつてベトナム戦争の際にわが国の市民団体がやったような合法的輸送妨害にあうかもしれません。このとき、市民団体は武器をまったく使わず、戦場以外で戦車の輸送への「阻止攻撃」を実施し、それなりの成果をあげています。これは立派な「戦闘行為」であったと思うのです。

戦争の結果が自国の存亡と自らの生死に関わる主権者の1人として要求します。仮に有事の際に自衛隊が市民団体に行動を妨害されるようなことがあれば、1度目は警告と退避の時間を与え、従わない、あるいは2度目以降の場合は射殺なり轢き殺すなりして任務を果たすべきです。自衛隊が戦争をするのは国内なので問題ないです。私はおかしいことを言っているでしょうか?

それがそれなりの成果をあげたのは(私は真偽を知らないので、真として)、おそらく国内・国際世論を気にしたからでしょう。普通ならゲリラ扱いで即処刑でも文句は言えないはずです。

機動的な装甲車の方が良い?

これらのさまざまな条件を考えると、わが国の新戦車について技術的には面白いものの、果たして必要な兵器なのか?と感じます。むしろ、耐弾性を向上した装甲車の車体をシリーズ化して、全体の機動力を増強するほうが、他の任務、治安出動、災害出動などにも有意義ではないかと思えるのです。先ほどあげた輸送妨害の場合でも、戦車ほど輸送ルートが限定されないため、妨害を受けにくいメリットがあるし、車輪式の装甲車のほうが、高速移動には向いてます。

やるとしても(やってほしいですが)、それと主力戦車は別の話だと思います。

他の任務、治安出動、災害出動について

確かに、それらに使えることに越したことはありません。特に自衛隊は世界有数の戦争をしない軍隊ですから、暇に見えます。積極的にこなして欲しいところです。しかしながら、自衛隊の主任務は軍事的侵略に対処することであって、治安出動や災害救助はあくまでも二次的なものです。二次的だけれど自衛隊が一番うまくやれるからやらせてる、という話です。そのために正規戦に必要な能力を削るというのは本末転倒としか言い様ががありません。

輸送妨害の場合について

先に述べたように、問題ありません。なんで不当な障害物を丁重に避けて通らねばならんのですか?

本音を言わせてもらえば、撃たれないと信じているから平気で妨害するんです。まじで撃ってくると理解できれば狂信者以外は逃げるでしょう。それでも逃げない奴は、敵と定義されてしかるべきです。

だいたい、歩兵の攻撃で戦車が吹っ飛ばされるんなら機動的な装甲車はもっと吹っ飛ばされます。

蒸し返しますが、仮に機動的な装甲車が超有効と思われる小規模歩兵による侵攻があったとしても、小規模なのでそれに合わせた兵器を用意せずとも撃退は可能です。小規模侵攻に合わせてそれ用の兵器を整備するなど、それこそ税金の無駄遣いだと思います。

お付き合い派兵は避けたい

以下、コメント欄から。

アジアで紛争が勃発して海外展開を求められたりした時、相手がたとえ旧式であったとしてもそれなりの数の、戦車と呼べるものを装備している国が相手なら、新戦車は必要になります。

逆だと思います。海外展開を求められた時、海外に展開可能な戦力がなければ断れます。「憲法が…」「装備が…」と言い訳して、それこそ給油だけで済ませたいです。ですので、私は海外で展開可能な陸上装備はあまり欲しくないです。陸軍かつ戦闘アリは戦死者が出ますから。(補足 : 私はこの点において、九条があるうちはうまく利用したいと思っています)

再度逆に、戦死者が出てもやるべき、国益になる、というのなら構わないと思いますが、1人でも戦死者が出たら内閣が引っくり返るような状態では陸軍は出せません。海外の紛争ごときで自国の政治が機能不全に陥るような事態は避けるべきです。陸軍の派遣は、100人単位で戦死者が出ても世論が平静でいられて初めて可能だと思います。

TK-Xの導入により74式戦車は実戦で使用されることなく終わりそうですが、これは兵器として最も重要な任務を果たした最高の引退になると思います。「使わなかったから74式は無駄だった。戦争がなかったのは九条のおかげ」とか言う奴がいたら殴っ…とっと、説明してやりたいです。

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那珂川 08-02-18 (月) 17:38

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