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ミサイルと衛星打ち上げロケットの違いの補足

  • 2006-06-22 (木) 15:34
  • 軍事

先日の記事、ミサイルと衛星打ち上げロケットの違いで不親切な部分を補足します。

  • ※日経過去ログマンセーなので話半分でお願いします。
  • ※先の記事で「H-2」と記述していましたが、間違いです。意図するところは「H2A」です。当該記事は修正済です。

記事「2005年度NASA予算案、新宇宙政策に沿ってスペースシャトルとISSを「損切り」(bizns.nikkeibp.co.jp)」によれば、スペースシャトルの打ち上げにかかる費用は年間で約4500億円です。これだけで日本の宇宙開発予算の倍以上です。一発あたりだと1000億近くかかってる勘定で(保守整備費用とか含んでるはずですが)、H2Aの約10倍になります。かかってる金額を見てしまうと、必ずしも再利用というお題目が低コストに結びつくとは限らない、ということが分かります。

ついでに日本の現状も。

米国の10分の1しか予算がありません。他の国よりはマシなのかどうか知りませんが、少なくともアメリカとの差は思っているより大きいです。

荷物を宇宙に運ぶ能力だけを比較すると、スペースシャトルは29t、H2Aは静止軌道なら4-6t(低軌道なら10t)、最大2個を宇宙に持っていけます。シャトルには人間が乗ってたり地球に還ってきたりするムダシステムがあるので比較すること自体アレですが、運送に関しては普通の使い捨てロケットの方が、性能・価格共に優れています。運送と言うか、投げっぱなし? シャトルは、荷物運びに関しては人間が手作業で衛星を調整したり修理したり、投げっぱなしではないところが長所です。

静止軌道と低軌道の違いについて少し説明。軌道は他にもありますが、ここではこの2つだけ。

静止軌道

静止軌道の静止とは、地球の自転と同じ速度で地球を回っている=地球上の任意の観測点から見ると静止しているように見える、ということです。地球にすげえ長い柱を立てて、その先っぽに衛星がくっついてるのと同じように地球の周りを回ると思ってくれて構いません。軌道と高度も決まっていて、成層圏の遥か上、赤道上空35000kmです(この位置・高さじゃないと地球の引力と釣り合わない。詳細はケプラーの法則だの何だの小難しいので略。あと、実は約36000kmなんだけど「赤道上空35000キロ」のが語呂がいいでしょ)。

後述の低軌道より遥かに高い位置に衛星を上げなきゃなりませんので、その分エネルギーを費やす=打ち上げられる衛星の重さが小さくなります。ロケットは大まかに“本体”“燃料”“荷物”で構成されており、燃料と荷物を積める量は(燃料も消費するまでは荷物扱い)本体の性能によって決まります。この本体は100まで荷物を積める時、例えば燃料80で上がれる高さまでは20の荷物を運べるが、燃料90で上がれる静止軌道には荷物を10しか運べない、ということだと思ってくれて構いません。

身近なところでは気象衛星ひまわり、スカパーやBSの衛星などです。ご自宅のアンテナの向きがしっかり固定されているのは、“地球上の任意の観測点から見ると”衛星の位置が変化しないから、つまり静止衛星だからです。静止衛星じゃない場合、アンテナが衛星に合わせて動かなきゃなりませんし、衛星が西の地平線に沈んで…地球の裏側に行ってしまったら、また東から昇ってくるまで番組が見られません。地球が邪魔になって。衛星に合わせて動くアンテナなんてのも可愛いかもしれませんが。

低軌道

高度300km-1500km程度の高さの軌道です。秒速8kmとかでビュンビュン飛び回ります(時速じゃないよ! マッハ30近く)。速度がないと重力の井戸に引き込まれてしまいますので、下に落ちるより速く横に運動する必要があるのです。そうすれば落ちても地面が曲がってるから落ちないんです。なんか「右足が地面に付く前に左足を上げる。左足が地面に付く前に右足を上げる。そうすれば空中を歩けるのだ!」みたいで分かりづらいので、ちょっと図を拵えてみました。
衛星が落ちない図 話が混じりますが、静止軌道は落ちる速度と横に動く速度(秒速3km)が24時間でちょうど釣り合う高さなわけです。地表で最低限必要な速度は秒速7.9kmとなっています(いわゆる第一宇宙速度=地球の衛星になれる速度。地球から逃れるには秒速11.2km=第二宇宙速度。太陽からも逃れるには秒速16.7km=第三宇宙速度。惑星探査機ボイジャー2号は秒速40kmで航行した)。

低い高度だとまだ大気が濃いので、ほんの少しずつですが摩擦で運動エネルギーが失われていきます。重力に負けるくらい速度が落ちると地球に落ちてします。そのかわり、静止軌道より低軌道の方が到達に必要なエネルギーが少ないため、小さなロケットでも衛星を打ち上げることが出来ます。また、単純に地球に近いため、出力が小さくても通信ができたり、写真を高解像度で撮影できたりします。最近のは衛星が自ら軌道を下げて撮影してまた戻る、とかあるらしいじゃないですか。静止軌道か低軌道かは用途によりけり、ということです。

ついでに書いておくと、日本のロケットはムダに高価! とか言われてたのはH2のときで、これは180億くらいかかってました。H2Aで必死こいて80-100億程度まで下げたようですが、そのせいで打ち上げ失敗しただのなんだのやってたのは記憶に新しいところです。特に庇う意図はないですが、欧州のアリアン5も計画当初は失敗がありましたし、アメリカやソ連みたく死人が出てないだけマシだと思います。

アリアンについて。アリアン4というロケットは荷物を運べる量はH2Aと同程度ですが、150回くらい打ち上げて成功率が95%くらいなのと、打ち上げコストが80-100億と安いので人気がありました。アリアン5はどうなんだろう。

おまけ。世界におけるロケットの現状(www8.cao.go.jp PDFファイルです)。平成16年でちょっと古いですが、今どんなロケットが使われてるか分かります。

※補足の補足:真っ当に学んだわけじゃないので、明らかな間違いがったら指摘してくれると助かります。

コメント:1

こざぴ〜 06-06-23 (金) 12:08

勉強になりました。
ことが宇宙になるとかかる費用もケタ違いですよね〜。

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