ミサイルと衛星打ち上げロケットの違い

話題のテポドン2号ですが、ミサイルであるとする解釈(＝危険)と、衛星打ち上げロケットである(＝安全)とする解釈が出ています。この2つはどこが違うでしょうか?

結論から言うと、「周辺国に与える脅威」について何の違いもありません。どっちでも同じです。

ミサイルならそのまま脅威です。仮にフタを空けてみたら衛星打ち上げロケットだったとしても、ロケットは軍事転用が可能ですので、少なくとも脅威のタネです。というか、そもそもロケットは第二次世界大戦でドイツが使用したV2以来、軍事用を改造して気象観測や衛星打ち上げ、有人宇宙飛行に使用されてきたという経緯があり、用途が違うだけでモノはほとんど同じなんです(冷戦時、弾道ミサイルを改造して有人飛行や衛星打ち上げに使用している。レッドストーンやアトラス、タイタンなどでぐぐれば分かる。どれもアメリカ製)。

北朝鮮のような(宇宙開発が初期段階の)国の場合、仮に衛星を打ち上げる気があるとしても、軍事用と衛星用の両方を同じロケットで賄ったほうが経済的だし無駄もないので、衛星打ち上げロケットに弾道ミサイルを兼ねさせるのは当然と思います。

そりゃあ衛星の代わりにNBC兵器を搭載すればいいだけとはいっても、宇宙に物を運ぶ物を地上の任意の地点に落とす物のはかなり違います。それでも、ハードもソフトも何もないところから作るのと、ハードと片方の運用ノウハウがあるのとでは大違いです。

それはつまり、「軍事用」か「衛星用」かは大した違いではなく、「持っている」のか「持っていない」かということです。もっと簡単に言うと、その意思があるかないかではなく、能力があるかないかです。北朝鮮は長射程の(彼らの主張では人工衛星を打ち上げられる)ロケットを保有しており、周辺国へNBC兵器を撃ち込む能力があります。

にもかかわらず、「あれはミサイルではない、衛星打ち上げロケットだ。だから危険ではない」というのは片方にのみ都合のいい考え方に他ならず、何も知らない人間に間違った認識をさせようとしている、と言われて当然と思います。

余談ですが、日本もH2Aなどの大型ロケットを国産してますので、周辺国からすれば「いつミサイルに改造するか分かったもんじゃない!」ということになります。ていうか言われてると思います。生物・化学や核関連技術も発達しているので、NBC兵器を開発する能力もあるでしょう。では、ロケット打ち上げるだけで大騒ぎになる北朝鮮と日本はどこが違うんでしょうか? 北朝鮮だけが不当に槍玉に上げられているのでしょうか…というのはロケット話から逸脱するので略。

さらにていうか、せっかく高いロケット技術を持っているのに弾道ミサイルを作らない国なんて他にあるんでしょうか? だから予算しょぼしょぼなんだよ。憲法九条テラツヨス。一発80億(今こんくらいだっけ?)のH2Aで打ち上げるともったいないからスペースシャトルに乗せてもらおうなんて言ってる奴は、他人の金とはいえスペースシャトルを1回打ち上げるのに幾らかかるか知ってて言ってるんだろうか。100年後か200年後くらいの宇宙資源争奪競争に出遅れるぞ。